劇場版名探偵コナン第26作目「黒鉄のサブマリン」が公開されてからはや一年。
最終的に興行収入は140億円を超え、見事灰原哀は「100億の女」になりましたね。
そして、先週には第27作目「100万ドルの五稜星」が公開され、またこの時期がやってきたなという感じでしょうか。
今回注目したいのは、今日の金曜ロードショーで初めてノーカットで放送される「黒鉄の魚影」。
この映画は中身が未だかつてなく濃く、ストーリーとしても非常に洗練されていて大好きな作品なのですが・・・
皆さん灰原とコナンのラブ(?)展開に気を取られて大事な本編が抜け落ちてないでしょうか!!!
原作のオマージュや原作からつながるストーリーが盛りだくさんだったほか、特に黒の組織に関する謎を考察する上でも重要なシーンが多数ありました。
本記事は、黒鉄の魚影で明らかになった黒の組織の内部事情についてまとめます!!
※本記事は一部原作102巻までの内容が含まれていますので、ネタバレにはご注意ください。
ベルモットと灰原
筆者が映画の中で一番驚いたのはこの取り合わせですね。
原作回「黒の組織との真っ向勝負」で灰原(シェリー)の命を狙い、
「漆黒の特急」でも直接手を下さないながらバーボンをアシストしていた訳ですが、
結果的には灰原を助けることになったわけです。
作中で2人を引き合わせたのはフサエブランドのブローチ。
ベルモットは、冒頭でバーボンと会話していた際にニュース記事の広告に目を向けた。
そこにはフサエブランドの限定ブローチの広告が。
一方、米花百貨店にいた灰原も限定ブローチ整理券を受け取りましたが、それを遠方から来た貴婦人に譲りました。
「助けたわけ?それを探るのがあなたの仕事でしょ?シルバーブレット君。」
この最後のセリフに全てが詰まっているわけですが、ここの解釈には結構幅があって面白いんですよね。
<灰原へのお礼説>
灰原の善意に対するお礼というのが一つ目の説です。
映画だけを見れば、この結論に落ち着くのが自然でしょうか。
「助けたわけ?それを探るのがあなたの仕事でしょ?シルバーブレット君。」
似たようなセリフをどこかで聞いたことありませんか?
それは、劇場版第3作「世紀末の魔術師」。
正体がバレそうになったコナンを工藤新一の姿で登場したキッドが助けた場面で放ったセリフ、
「じゃあこの謎は解けるかな?名探偵。なぜ俺が工藤新一の姿で現れ、厄介な敵である君を助けたのか?」
この時はコナンがこのセリフに応答し、
「バーロー。んなもん謎でもなんでもねえよ。俺を助けたのはこいつを手当てしたお礼だろ」
ということで、こいつ(鳩)を助けてくれたからコナンを助けたということが明言されているので、特に疑問にもならないんですよね。
今作でいえば、「灰原がイチョウのブローチを譲ってくれたからそのお礼に灰原の危機を救った」というのがそれに当てはまると言えます。
ただ、筆者としてはこの案は却下したいというのが本音で.....
理由としては、
①上でも述べた通り、ベルモットは原作中で灰原(シェリー)の排除を望んでいた(る)にも関わらず、ブローチを譲ってもらっただけで灰原を助けるとは考えにくい。
②キッドは単なる善意で動く傾向があるが、ベルモットはコナンと蘭のこと以外に関してはかなり冷徹。
なので、原作とも絡めた他の2説を推したいと思ってます
<コナンを助けるため説>
そもそも本作の発端は直美アルジェントが発明した老若認証システムにあります。
灰原は老若認証システムのテストとして画像を使われた結果、宮野志保と同一人物であることが判明しました。
そうなれば、灰原の身近にいる江戸川コナンに目を付けられるのは避けられず、簡単にコナンの正体に気づいてしまいます。
つまり、コナン=工藤新一は直ちに命の危険に冒されることとなり、ベルモットは新一を宝物と形容しているため、その状況は彼女も望んでいません。
なので、ベルモットは灰原(=コナン)を助けたといえるのです。
原作を読んでいればベルモットのイメージは割と共通していて、
「基本目的の遂行のためには慈悲心などはないが、例外としてコナンor蘭は必ず助ける。」
っていうところですよね。
このイメージからすれば、この説はかなり有力なのかなと個人的には思っています。
<ベルモット自身とボスを助けるため説>
これは上の説と共通している部分もありますが、かなり物語の根幹に関わる部分ですね。
こちらも灰原が老若認証システムによってシェリーと同一人物だとバレることから端を発しています。
作中でも描かれる通り、ベルモットは老若認証の破壊をボスから命じられています。
ここは原作の知識が必要ですが、軽く説明すると
ベルモットは表向きはクリス・ヴィンヤードという女優です。ただ、彼女の母親であるシャロン・ヴィンヤードと指紋が一致したという衝撃の事実が明らかになっており、クリス=シャロン説があるんですよね。
そうなると、ベルモットが一人二役をやっていたのか、それとも何らかの薬によって若返った姿がクリスなのか。この辺りがかなり怪しくなってきます。
そして、96巻で黒の組織のボスだと明かされた烏丸蓮耶の話も関わります。烏丸がもし生存していれば140歳を超えており、こちらも何らかの方法で若返りしていた可能性があります(後述)。
つまり、この2人は若返りが疑われるような組織の中でも異質な存在であると言えます。
何か老若認証で調べられたらやましいことがありそうな感じがしますね。
なので、その認証システムのポンコツさを示すため灰原に似た色々な姿で防犯カメラに写ったと言えます(結構このシェリーで映りまくるベルモット好き)
コナンを助けたかった説と目的は似ていますが、その守る対象が違うという感じですかね。
実際のところは、この説と上の説の2つを組み合わせたものがベルモットの動機であったと見られます。
ラムの発言の真意
次は、先ほどのボスの話題とも繋がってきますが、ラムがボスから最終手段、すなわちパシフィック・ブイの破壊を命じられた際のこのセリフはどうでしょうか。
「老若認証・・突き止めるのに使えると思ったんだがな・・・。最近、姿を見せないあの方の所在を」
前回の組織映画である第20作「純黒の悪夢」では声だけの出演だったラムですが、今作では原作で正体が明らかとなり初めての姿を見せての出演となりました。
組織のNo.2であるラムでさえもボスの場所が分からないというのはなかなか衝撃の事実でした。
さらにここで注目なのは、ボスの居場所を突き止めるために「老若認証システム」を用いようとしている点です。
姿が同じであれば、「顔認証システム」のみを駆使すれば簡単に居場所が分かりそうなものですが、それは不可能だということが発言から読み取れます。
すなわち、ボスが若返ってラムも知らない姿になっているという説を補強する形になっています。
103巻以降、立て続けに謎の老人3人が登場していますがこの内の誰かがボスなのか。
今作でボスの話が出てきたのは、そこに向かう布石だったのか。
今後のストーリー進行に注目が集まりますね。
最後のバーボンの意味深発言
エピローグでのバーボンこと降谷零の発言を2つ取り上げます。
個人的には一番驚いたのがこの2つですね。
組織が老若認証に興味を失ったことを伝えるセリフ
具体的には、
「おそらくベルモットがいろんなシェリーに化けて、各地の防犯カメラにその姿を残したんだ。どの人物の指先にも同じネイルが塗られていたからわかった。おかげで組織は老若認証への興味をなくしたよ」
の部分です。
個人的にはネイルを落とさないベルモット、かなりドジ踏んでると思うんですがそこは一旦置いておいて・・・
このセリフからわかるのは、
「そのおかげで組織は老若認証に興味をなくした」
ということなんですが、裏を返せば
「バーボンはベルモットの偽装工作を知っている」
「バーボンは老若認証をまだ信頼している」
「シェリー=灰原を信じている」
っていうことになってしまうんですよね。
これ結構重大案件で、原作だと灰原の正体を疑うシーンはあってもそれが幼児化につながる何かだと認識しているとは確認できないんですよね。
灰原を疑うシーンで言えば、101巻file10からの話ではポアロに来た少年探偵団の中で、安室透がしきりに灰原の様子を気にしているのが分かります。
ちなみに「黒鉄の魚影」を無理矢理原作の時系列に乗せるならば、キャメル捜査官の髪形から100巻の「FBI連続殺人事件」よりは前だということが明らかになっています。
なので、
黒鉄で灰原の正体に勘づいている→101巻で灰原の様子を気にする
というのは時系列的には矛盾していません。
劇場版の内容は原作とパラレルであることはもちろん前提となりますが、映画公開時点での原作の展開に矛盾を作るほど乖離したストーリーとは言えません。
ですので、原作でも割と灰原の正体とシェリーが同一人物まではいかないものの、何らかの関係があるとは勘付いているのでしょう。
ちなみに言うと、101巻のfile9までの話は「安室透vs怪盗キッド」となっているのですが、安室は怪盗キッドに対して
「君その感じ、どこかで会った気がするんだが・・」
とまさかの爆弾発言。もちろん「どこか」とは78巻のミステリートレインのことで、
怪盗キッドの変装越しでも「その感じ」を嗅ぎ取れる安室はさすがだなと思いますが、
と同時にキッド案件にはこれまでこれっぽっちも関与したことが無さそうな安室が既視感を覚えたならば、ミストレに発想を飛ばすことは可能だと思うんですね。
この視点を含めれば、安室が灰原=シェリーを信じているという説は信頼度を増すのではないでしょうか。
君なら知ってると思った発言
これは、先ほどのバーボン発言後、コナンとのやりとりの中でのセリフです。
コナン「でも、どうしてベルモットが・・。」
安室「さあね。君なら心当たりがあると思ったんだけど・・(略)。」
読者目線からすればベルモットがコナンに目をかけていることは前から知っている事実ですが、それを本人に対してほのめかすのもなかなかアムロさん、ブッ混みますねっていう風に感じましたね笑
普段ベルモットとバーボンはかなり行動を共にしていることは原作からもわかっています。その際、ベルモットはバーボンと一つの約束を交わしており、それが
「コナンと蘭には何があっても手を出さない」
というものですね。これは76巻の「探偵たちの夜想曲(ノクターン)」で、まだバーボンの正体がわかっていない状態の時、ベルモットが「私との約束は守ってくれるわよね」とバーボンに電話をかける件で約束の存在が明らかにされ、
90巻の「裏切りのステージ」で初めてその詳細が明かされる形になりました。
おそらく安室はコナンとベルモットの因縁について詳しくは知らないでしょうが、ただならぬ関係は感じ取っていそうです。
それをコナンに対してほのめかしたのは、原作も通してこの映画のセリフが初めてだったので衝撃でした。
最後に
今回は、金ロー放送記念ということで「黒鉄の魚影」での重要シーンを3つ取り上げました。この作品は原作とのつながりで見ればオマージュや伏線で色々楽しめますし、劇場版だけでも十分に感動を味わえる本当に神作だったと思います。
自分的にはコナン劇場版過去Top3に入る位で心にブッ刺さる内容でした。
特にed前最後の場面は、灰原好きの筆者からすれば、過去のせいで塞ぎ込んでいた自分を幾度もなく暗黒の海底から引き上げてくれたコナンがとっっても輝いて見えて気づいてたら灰原と一緒に泣いてました笑
この神作、コナン映画史上初100億突破作品というメモリアル作品の面だけでなく、心に残るという意味でも語り継がれていくのではないでしょうか!!
おまけ:老若認証システムの未来
自分がどうしても気になることを一つだけお伝えします。それは、
結局老若認証システム潰せてなくね?
という点です。
確かにパシフィックブイは潰してそこに会ったシステムもろとも消滅したわけですが、
最後に老若認証システムの開発者である直美アルジェントは海外に渡航します。
そこで新たなパシフィックブイで任務に着くと見られますが、
つまり組織とのイタチごっこになるんですよね笑
直美アルジェントは生きている限りは、システム開発のノウハウを有しているし、それを他の技術者にも継承すればどんどん組織側からすれば手に負えなくなります。
そうなると、やはり直美アルジェントはこれからも命を狙われる可能性があります。
ただ、個人的にも直美は好きなキャラクターだし、幸せに暮らしてほしいので
想像はこれくらいで留めておきます。
また直美アルジェントと灰原が出会って、コナン側に協力する展開があればアツいですね!!